イタリア映画“Ieri, Oggi, Domani”は、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが出てくる、オムニバス・コメディ映画です。このブログも昨日(過去)のこと、今日(現在)のこと、明日(未来)のことを書いていきます。

2010年4月25日日曜日

Good luck, my friend! (その3)

日が暮れ始めて、次第に暗くなっていくような気がした。
Iと私は延々と続く鳥居の中を歩き続けた。
しかし、歩けど歩けど、きつねうどんが食べられるような店が
その先に出てくるようには思われない。
どんどん山奥に入っていき、ますます人里離れていく。

「この先にきつねうどんが食べられる店なんてほんとにあるのかな?」
「あって欲しいよ。来たからには、僕はうどんを食べなきゃならないんだ。」

しばらく行くと、急に店が3軒でてきた。

「あ~!!ほんとにあるんだね!」

3軒ともぱっとしない感じだが、そのうち一組のお客がはいっている店を選んで入った。
早速、きつねうどんを注文するI。
私はあまりお腹が空いていない。さて、どうしよう。。。
メニューのなかにわらびもちをみつけて店のおばさんに値段をきいた。
「550円です。うちは他の店と違って手作りしているんでね。」
おばさんは価格が高いと言われるのを先回りして答えた。

「え?ここまで来てきつねうどんを食べないつもりかい?」と、I。
「うーん、それもそうだね。やっぱり、私もきつねうどんを頼むわ。」

しばらくして運ばれてきたきつねうどんは、
今までに食べたどんなきつねうどんよりもまずかった。
味のほとんどしないスープにお揚げ。
それなのに、おばさんは偉そうに言った。
「うちは他の店と違ってお揚げを煮ています。他のところは買ってきた味付きのお揚げをつかってるんですよ。」
「へえ、そうなんですか?」と言いつつ、
こんな味付けなら買ってきたお揚げの方がよっぽどマシだと思った。

「信じられない。味がほとんどしないね。」と、私。
「たぶん、調味料を切らしてたんじゃないの?」と、I。

きつねうどんを食べおわって、Iは言った。

「目的達成!」

せっかくのきつねうどん、もう少し美味しかったらよかったのに。。。
私にはそれが残念だった。
でも、Iはそんなことに気もとめないような表情で
ただただ、やろうと思っていたことをやれたことが嬉しいらしかった。


          ↑The worst Kitsune Udon ever


Iは土曜日に新幹線で東京に戻り、アメリカで新しい生活を始めるため
今日、成田からアメリカに向けて旅立って行った。
Good luck, I !

(終わり)

Good luck, my friend! (その2)

私達が伏見稲荷大社に着いた頃には既に4時をまわっていた。
境内を一周して、千本鳥居をくぐる。

「映画、『メモワール・オブ・ゲイシャ 』見たかい?」
「うん、見たよ。」
「主人公の芸者を演じてた女優って誰だっけ?」
「チャン・ツィイーだよ。そういえば、他に中国人女優のコン・リーも出てたよね。」

そういえば、日本の話なのに、主要な出演者は中国人女優だなとふと思った。
この話を中国人(香港人)のIとしている私は、
段々、その映画がまるで中国の話のような気がしていった。

「あの映画の中で主人公がこの神社の鳥居のなかを逃げるシーンがあったよね?」
「全然、思い出せないけど、そうだっけ?」

その映画をみたのは5年ほど前のことで、細部についてははっきりと思い出せない。
Iにはそのシーンがとても印象に残っているらしい。

「僕も、チャンみたいに鳥居のなかを走るから、写真撮ってよ。」
「いいよ。」

そう言って、鳥居の中をゆっくり走るI。
彼の後姿をシャッターを切る私。
今度は、私がチャンに扮して鳥居の中を走り、Iが写真を撮った。
日が暮れ始めて人気のなくなった鳥居の中で、大笑いする私達だった。

「もしかして、I、ここに来たかったのは、その映画のせいなの?」

Iはニヤッと笑って頷いた。

(つづく)

2010年4月24日土曜日

Good luck, my friend! (その1)

「金閣寺に行ったら、その後で伏見稲荷大社に行く時間あるのかなぁ?」
金閣寺に向かうバスの中で、Iは少し不安げに言いった。
「んー、多分無理だと思うよ。だってもう3時すぎだもん。」
「そっか。。。」
「でもね、もしもIが金閣寺より伏見稲荷に行きたいって言うんなら、金閣寺はやめて伏見に行こうよ。」
Iの目が輝いた。
「うん。じゃあ、伏見に行こう!」
私達は次のバス停でバスを降りて、反対方向に向かうバスに飛び乗った。

Iは私のアメリカの大学時代の友達だ。
成田からアメリカ行きの飛行機に乗るため、香港から日本にやってきた。
「京都行きは、渡米前の僕のささやかなバケーションなんだ。」
成田入りの成田発なのに、わざわざ新幹線で京都まで会いにきてくれたのだ。

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数週間前のある日、仕事を終えアパートに戻ってパソコンを立ち上げると
IからのメッセージがMSNメッセンジャーに残っていた。

「京都に行ったら伏見稲荷大社に行くんだ。
そこのキツネは稲の神様の遣いで、うどんが好きなんだ。
伏見稲荷をずっと歩いていくと、キツネが好きなうどんを出す店があるんだって。。。」

何だかよくわからないけれど、随分変わったことを言うなと思ったものだ。

(つづく)