もう10数年前の話。
初めて海外旅行に行った先は、イギリスとフランスだった。
4日間過ごしたイギリスで友人と別れた後、
私はフランスに一人で向かうことにした。
どうしてもパリに行ってみたかったのである。
電車でドーバーの港まで行き、そこから船に乗った。
船が港から離れていく時、ドーバーの有名な
石灰石でできた真っ白な崖を眺めていたのを覚えている。
その当時、イギリスとフランスを結ぶ海底トンネル(ユーロトンネル)は
なかったから、飛行機で行くか、船で行くしか手段がなかったのである。
フランスでは、私の大好きなバンド、The Stranglersの
ファンジンを出していたフランス人の男性F の家に泊めてもらうことになっていた。
彼とは何度か手紙のやり取りをしていただけだったが、私の願いを快諾してくれた。
パリ郊外の、高級住宅地に住んでいた彼には、
同棲中の彼女と、二人の娘がいた。
フランスではカップルが結婚しないケースが多い。
結婚しなくても、カップルやその子供たちは、結婚している人たちと
ほとんど同等の権利を与えられている。
上の娘は、その当時、3歳未満。下の子は生まれて数か月だった。
若いカップルは、当然、仕事と子育てでとても忙しそうだった。
翌日の夕方、Fと一緒に保育園に娘たちを迎えに行った。
3歳未満のオードリーはお父さんが迎えに来たのを見つけて
小走りで飛んできた。
とてもかわいらしくて、いっぱい話し掛けたかったが
私にはフランス語が話せなかった。
なんとかフランス語で繰り出した、Ou est Eve? (イブはどこ?)
という一言が、なんとか通じて、オードリーはなにかを言いながら、
保育所のとある部屋の方向を指さした。
あと、ウサギのぬいぐるみを指さして、
Qu'est-ce que c'est? (これは何ですか?)と聞くと
オードリーは、C'est un lapin. (これはウサギです。)と答えた。
日本に帰国して、フランス語を勉強し始めた。
またフランスに行ったら、オードリーにフランス語で話しかけたい、
そう思ったからである。
何か目標がないと、勉強が続かないと思ったので
フランス語検定の4級を受けることを当初の目標にした。
(フランス語検定は1~5級あり。)
数ヶ月後、4級を受験すると、合格した。
で、その次の年、3級を受験して、合格した。
フランス語はその昔、外交の場で用いられた公用語だった。
そのうち、英語にとってかわられたが、
フランス人はそれが今でもきっと悔しいのだろう。
フランス政府は国を挙げて、フランス語の普及に力を入れている。
フランス語検定に合格すると、東京と京都で開かれる式典に出席できた。
その式典には、東京の会場ではフランス大使が出席し
京都ではフランス領事館からフランス領事が出席して祝辞を述べた。
各級の成績優秀者上位3人が、フランス政府や、フランス企業から
プレゼントをもらっていた。
美しく包装され、リボンが掛けられた箱を、私は羨望の眼差しで眺めていた。
そのあと、立食パーティがあり、軽食と飲み物が用意されていた。
その後、2級を受験したかったが、2級は2次試験で面接があり
フランス語を全く会話する機会がなかった私には、かなり大変だと思えた。
(3級までは筆記と聞き取り試験のみ。)
その後、フランスに行かないまま、数年が過ぎた。
そして、私は3級の合格後、急にフランス語の勉強をやめてしまった。
あんなに一生懸命勉強し、単語や動詞の活用を覚え、文法をやったのに、である。
で、今の私のフランス語の実力はかなり初心者に近い。。。
去年、Gからフランス語の本を2冊もらった。
1冊は、なんとか読み終えた。
しかし、もう1冊を読もうとしたところ、まったく歯が立たなかった。
その本は、有名な作家の作品の一部を集めたものだったため
文学的な文章のためかかなり難しかった。
そして、思った、
もう一度、フランス語をやろう。
というわけで、最近は昼休みにフランス語を学んでいる。
語学学習の極意は毎日コツコツである。
もしかして、そのうち、仕事で役に立つかもしれない。
パリで試食販売とかあるかもしれないし。。。(?)