私は恐る恐る彼の傍に近づいた。
彼をそっと見つめる私。
はるか彼方を見ていた彼が急に私の方に振り向いた。
そして、一瞬、彼と私の眼が合った。。。
「怖っ!」
私は心の中でこう叫ぶと、彼の傍から逃げ出した。
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ええ。。。
怖すぎました。
ここでの彼とは大きな虎です。
↑逃げる私
これは、タイのチェンマイにある、Tiger Kingdom での話です。
チェンマイの空港に到着して、各種パンフレットを漁っていた時、
Tiger Kingdomのパンフレットをみつけたのでした。
トラ王国ってどうよ??なんて、ネーミングが可笑しくて笑っていたのですが
まさか自分が実際に、そのトラ王国にいって虎を撫でることになるとは
そのときには夢にも思っていませんでした。
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チェンマイで2日目の夜、Gと私は、次の日何しようなんて話していたのです。
何か参考になるものがあるかもと思い、ホテルのフロントに降りて行き
各種ツアーが置いてあるツアーデスクでパンフレットを見ていたのです。
その時、目に留まったのが、セダンタイプの貸切車で行く一日ツアー。
行先:蘭ファーム、メーサ象キャンプ、モンキー・スクール(学校ってどうよ??)、
スネーク・ファーム、タイガー・キングダム、首長族などの民俗村。
「あっ、このツアー、タイガー・キングダムにも連れて行ってくれるんだね。」
象、猿、蛇、虎と、
一日に動物が満載のような気がしましたがツアーに申し込むことに。。。
タイガー・キングダムに到着すると
まず、どのサイズの虎にするかを決めてチケットを購入します。
大、中、小。
あるいは、大と小とか、コンビネーションを自分で決めることもできます。
トラ好きのGは、迷わず、大を選択。
「僕は大きいのがいいけど、君はそれでいい?」
「うん、まあ、いいよ。」
入場料にはAIGの災害保険料が自動的に含まれていて、チケット購入時に
保険加入書類にサインします。
万が一、虎と何かあった時(咬まれたり、引搔かれたり?)のための保険のようです。
飼いならされているとはいえ、トラは野生の動物ですから
いつなんどきどんなアクションを起こすかわかりませんからね。。。
注意事項
・トラの写真を撮るときフラッシュはたかないでください。
・トラを触るときは、はっきりと強く撫でたりたたいたりしてください。そっと撫でられるとトラは反応します。
・トラの近くで急な動きをしないでください。
・荷物は檻には持ってはいらないでください。
私たちは、大きなトラの檻の前に連れていかれました。
三つの檻があり、それぞれの檻には一頭づつトラが入っています。
私たちは3つの檻に順番に入って、トラをなでたり、トラの上に寝そべったりして
写真を撮ることになっていました。
私たちに与えられたのは15分。
私たちの順番を待っている間、人々がトラと写真を撮っているのを眺めながら、
ふと、なんで、お金を払ってこんな危険なことをしようとしているのだろうと
思ったりしました。
30分ほど待ったあと、ガイドが私たちに一つ目の檻に入るよう促しました。
その時の私は、まるで死刑を宣告された囚人のような気持になりました。
檻の中には、私とGとガイドと大きなトラ一頭。
まず、Gが寝そべっているトラの後ろに座って、撫でたり
トラを叩いたりしました。
その間、私はカメラマンになって、Gとトラの写真を撮り続けました。
ガイドが言った。
「さあ、今度はあなたの番ですよ。」
一瞬、固まる私。
「あっ、私は結構ですから。。。ははは。。。」と、
言おうかと思いましたが、頭をよぎったのは入場料のこと。
せっかくお金を払ったのだし、やってみるか。。。(←セコイ?)
勇気を振り絞って、トラの後ろ側に座ってみた。
「はい、じゃぁ、撫でてください。」と、ガイド。
恐る恐るトラを撫でてみた。
そうだ、はっきり強く撫でなきゃヤバいんだっけ?
撫でていますよと主張するように、強く撫でたたり、叩いたりした。
ふ~ん、トラってこんな毛並なんだ。。。
ちょっと固めの長い毛の下には短い柔らかい気が生えているようだが
量はそんなに多くない。
そして、ちょっと湿っているような気がした。
「じゃ、次はトラの上に寝そべってください。」
え?
引きつる顔。。。
それでも、なんとかやってみる。
一通りやって、次の檻へ。
この檻のトラは細長い台の上に外を向いて寝そべっていた。
また、Gから先にその台の上に座って、トラに寄り添うようにすわって
トラを撫でたり、頬を寄せたりして写真を撮る。
今度はGと一緒に写真を撮ってもらったりした。
さて、とうとう最後の檻へ。
今度のトラは横座りしている。
即ち、今までの二頭と異なり、頭を起こしているのでした。
Gが傍に座って撫でたりしている間、
そのトラはGをじっと見たり、軽く口を開けたりした。
ガイドが棒のようなもので、別のところを叩いて
注意をそちらに向けようとしましたが、
そのトラは何度もGの方に向いていました。
私の番になって、トラの傍に座って撫でようとした瞬間
トラが私の方にくるっと向きを変えた。
そして、至近距離でトラと目が合った私は
すっかり肝をつぶしてしまい、それ以上は無理でした。
(冒頭に書いた通りです。。。)
トラとの対面を果たした後に、
「僕たちの時間は15分もなかったよね?」と、不服そうなG。
そう言われてみると、15分もなかったような気がする。
でも、あれ以上は無理ってか、こんな体験は一生に一度で十分です。
ふー。
そもそも、私は、『君子危うきに近づかず』というタイプの人間なのですが、
こんなことが出来たのも、Gと一緒にいたからかな、なんて思います。