上半身裸になるように言われ、ベッドに横たわる。
看護師や例の若い研修医もベッドの周りに控えていて
一瞬恥ずかしく感じるが、もはやそれどころではない。
M医師は計りでしこりの大きさを測定して看護師に記録させる。
その数字を聞きながら、生きた心地がしない私。
「では、エコーで見てみましょう。」
M医師はそう言うと、私の左胸にゼリー状の物体を塗り
エコーのカメラ(?)をその上にあてがった。
その瞬間、
「あー、これは水ですね。」と、M医師。
「え? み、水ですか?」
「Sさん、よかったですね。これは悪いものではないですよ。」
それまで、緊張していた医師の声が一瞬にしてやわらかいものになった。
「じゃ、今から麻酔をかけて、注射器で水をぬきます。」
M医師はそう言うと、胸の下辺りに麻酔注射を打った。
チクリと痛みが走る。
その直後に、注射器を同じ辺りに射して水を抜き取ったようだった。
ようだったというのは、麻酔が効いていたため、
注射針を刺された感覚がなかったのと、
小心者ゆえ眼を開けて一部始終を見届ける勇気がなかったのである。
エコーから、水抜きまで、所要時間、約7~8分。
本当にあっという間の出来事だった。
(続く)
"Speakeasy" by Shed Seven