M医師は水を注射器で抜いた後、エコーの画面を見せながら言った。
「ほら、もう何もないでしょう。」
見ると、画面に白く映っていた塊はもうなかった。
M医師によると、悪性の腫瘍の場合、
エコーで見ると、黒く映るものらしい。
膝に水がたまるというのは聞いたことがあるが
胸に水が溜まるなんて聞いたことがない。
本当に変わったことが起きるものである。
「念のため、内容物を検査します。
一ヶ月後に検査結果を聞きに来てください。」
そして、一ヶ月後に再び病院を訪ねると
M医師は特に問題はないといった。
よくわからないが、
クラス2という段階で、問題のないレベルらしい。
もしもこれがクラス1だったら問題なのだそうだ。
よくわからないのだから質問すればいいものを、
M医師の前では、すっかり借りてきた猫になってしまう私であった。
悪い結果でなかったのだから、ま、いいか。。。
「ほらね、僕が言ったとおりだっただろ?」と、少し得意げに言うGだった。
今後は年に一回、マンモグラフィーを受けることになった。
こうして、一年前に予約を入れられたのである。
それが、奇しくもなぜか今年の七夕なのだった。
喉もと過ぎれば熱さ忘れるというが、
私はすっかりマンモグラフィーの痛さを忘れていた。
胸を挟まれたとき、あまりの痛さに痛すぎて声が出なかった。
検査技師の、痛かったら言ってくださいね、との言葉に、
「いた、いた、いたいです。。。」とかすれるような声でようやく言った。
だが、ぎゅっと挟んだまま緩めてくれる様子がなかった。
「私を殺す気か~~~!!!」(←心の叫び)
マンモグラフィー後、M医師とお会いした。
今回はレントゲン写真に何の影も映っていなかった。
その後、M医師による胸の触診を受け、帰路についた。
次は、また来年の七夕の予定である。
翌日、鏡で胸を見ると、数か所あざが残っていた。
あれは、まさに拷問である。
昔の拷問ってああいうのもあったかもしれない、そう思った。
胸を挟まなくてもいいマンモグラフィーが開発されたらいいな。
(終わり)
"Where have you been tonight?" by Shed Seven