イタリア映画“Ieri, Oggi, Domani”は、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが出てくる、オムニバス・コメディ映画です。このブログも昨日(過去)のこと、今日(現在)のこと、明日(未来)のことを書いていきます。

2008年1月5日土曜日

愛とは



Gとはいろいろな映画を観た。
商業主義のハリウッド映画を嫌うGが選ぶのは、ヨーロッパや、アジア、中東の映画など、およそアメリカ人や日本人があまり見ないと思われる映画であった。
ハリウッド映画を一本作るのにかかるお金で、これらの映画が何本作れるだろうかと思うくらい、ほとんどお金がかかっていない。
しかし、そこには素晴らしい人間ドラマがあった。
Gはこういった映画をインターネット上で探してくるのである。

ある日、フランス映画、Le Hussard sur le troit (1995)を観た。
英語のタイトルは、Horseman on the roof だが、邦題は知らない。

物語はフランスで繰り広げられる。時代は18世紀か17世紀くらいだろうか。
イタリア人の貴族、アンジェロは新しい政権によって
イタリアを追われフランスに逃亡している。
逃亡先のフランスでもイタリアからの暗殺者から追われて町から町へと
逃げまわる毎日。
或る嵐の夜、偶然知り合ったフランスの貴族婦人ポーリーンに宿を提供される。
そして、イタリアに帰国したいと願うアンジェロと、フランス南部に行っている夫に
会いに行くというポーリーンは一緒に旅を始める。

その当時、フランスには疫病が蔓延し、多くの死者がでていた。
疫病の為、水を飲むのも危険。食べ物も不足していた。
疫病から端を発して、フランスはまさに混乱の真っ最中だった。
そんな危険がいっぱいの旅の間、アンジェロはいつも彼女のそばに仕えて
ポーリーンを、まるで家来であるかのように守るのであった。

ある夜、ポーリーンが急に疫病に感染する。
普通に話していたと思ったら、急に顔に死相がでて倒れるのである。
アンジェロは彼女を急いで暖かい暖炉の前に運び
彼女の衣服を脱がせて、必死で体をさする。
アンジェロの必死の看護のおかげで、彼女は奇跡的に持ち直すのである。

こうして、二人は旅を続ける。
ここで映画は終わるが、その後の二人の運命を字幕が伝える。
最後に彼女は念願の夫の伯爵に会えるが、彼は妻を離縁する。
その後、彼女はアンジェロと一緒になるのである。

ストーリーはこんな感じである。
一緒に旅をしていても、二人は安易に恋に落ちたりしない。
二人は節度のある距離を取っている。
すぐにベッドインするような、安易なラブストーリーが流行っている昨今であるが、
二人を見るていると、相手に対する尊敬の念や相手を大切に想う気持ちが
感じられ素晴らしいと思った。
人を愛するとは、こういうことなんだと思った。

また、ポーリーン役のジュリエット・ビノシュの気品ある美しさ、
アンジェロ役のオリビエ・マルティネスのハンサムさには感嘆した。

「ねえ、アンジェロは最初からポーリーンのこと愛していたのかな。」と、私。

「ああ、間違いないね。」と、G。

「伯爵はポーリーンが苦労して会いに行ったのに、離縁するなんてひどくない?」

「きっと伯爵は彼女を愛していたんだろうな。
 彼女がアンジェロを愛しているのを察して離縁したんだ。
 そのおかげで、ポーリーンはアンジェロと一緒になれたんだから。」

「もしも、私がポーリーンみたいに病気になったら、あんなふうに看病してくれる?」

「いやだね。」と、即答するG。

「私の彼は、私があんなふうになっても、何もしてくれないんだって!」と、ふくれる私に、Gは笑いながら言った。

「勿論、冗談だよ。看病するに決まっているだろ。
でも願わくば、あんな状況には陥りたくないもんだね。」